タニス・リーが永眠しました。

去る2015年5月24日、作家タニス・リー氏が永眠されました。

氏は私に海外ファンタジーの素晴らしさ、海外SFの豊かさを教えてくれた作家です。
初めて読んだ著書は『闇の公子』でした。浅羽莢子氏の翻訳の素晴らしさも手伝い、そこに描かれた美麗で俗世の価値観とは違う理で構築された世界観にただただ圧倒されました。
続刊『死の王』はその長さに何度か挫折したものの、こんな作品がこの世にあることに感謝したくなる見事なまでの残酷な美に彩られており、とても大切な一冊になりました。
もしかしたら、私は氏の著書によって文章に鮮やかな色彩が宿るのだと初めて知ったのかもしれません。

SF作品『銀色の恋人』『銀色の愛ふたたび』も忘れがたい作品です。『銀色の恋人』の主人公は恵まれた少女です。素敵な家があり素敵な母親もいます。でも、物語が進むうちに、その母親が自分をコントロールしやすい「いい子」として手の内に収めていたのでは、と気付き始めます。
これは少女の自立の物語でした。

そして氏の悲報が伝えられた時、私はファンタジーでありSFでもある『パラディスの秘録』シリーズ最終巻、『狂える者の書』を興奮しながら読んでいる途中でした。

氏の著書は100作を超えるそうですが、邦訳された本で現在入手可能なのは40冊に満たないようです。
今、私は環早苗氏翻訳のSF作『バイティング・ザ・サン BITING THE SUN』を読み始め、その世界の奔放さに強く惹かれています。

タニス・リーさま、ありがとうございます。
これから一冊一冊、大切に読ませていただきます。

草々