夜に抱かれて 第5話

第5話 ゲームの報酬

司のマンションにやってきた土橋建設社長の元愛人チホは、タイミング悪く忘れ物を取りにきていた苑子と鉢合わせることになり、司と流星の策略が発覚してしまいます。
怒って帰るチホ。
「怒ってる? 俺たちのこと」
苑子に内緒でゲームを仕掛けていたことを恐る恐る訊く司。苑子は、怒っているのは自分にだと返します。
ゲームオーバーだと言う司に対し、流星はチホが忘れて行った手帳を手に、諦めないと宣言します。
「苑子さん、傷ついちゃいませんか? このまま引き下がっちゃ、苑子さんの値打ちが下がります!」
止めようとする苑子を制する司。
「金と女の絡んだ修羅場はホストにはつきものだ」
締めるところは締めて、手を離すところは離して流星の自主性に任せる。司は実に理想的なコーチです。
流星は手帳にある連絡先を虱潰しにあたり、閉店前の『キス100万回』にいたチホを捉まえます。
驚いてドアを閉めようとするチホを逃がすまいと、流星は重たそうなドアの隙間に片足を突っ込み、当然挟まれて悶絶します。
痛む脚を抱える流星の姿に毒気を抜かれたチホは、流星を店に招き入れます。
中で流星はチホを口説きます。くだらない常識に囚われていた自分を変えたい。だから自分の一生を三千万で買わないか。
契約書を書き血判を押す流星にチホも本気を察します。
そこに現れた、手にあざのある男。チホにそそのかされて三千万を盗んだのに裏切られたのを恨んで追ってきたのです。
三千万円とチホを守るため、男と乱闘を繰り広げる流星。
男が流星の顔を潰そうと割れたガラス瓶で流星に襲い掛かるに至り、耐えられなくなったチホは流星の制止を聞かずに金の隠し場所を吐きます。

流星の電話を受ける司。
なんと、流星は三千万を獲得していたのです。
苑子のアパートで、3千万を取り返したいきさつを話す流星。
実はチホが手にあざのある男に渡したのは、偽の鍵だったのです。
本物の鍵を、プレゼントだと流星に渡すチホ。
チホは流星の心意気に打たれたのだと言います。
それではけじめがつかない流星は、ひとつの提案をします。
「3千万のお礼に、キス100万回ってのはどう?」
チホは答えます。
「100万回にも負けない、新宿一、東京一の熱ーいキスをちょうだい?」

「お前、かっこうよすぎねぇか? 気障っていうか」
一連のやり取りを聞いた司が、ややあきれたようにコメントします。
「こんな時、司だったらどうするかって考えて、真似しただけだよ」
さらりと答える流星に、やや瞠目して絶句する司。流星の素晴らしいお手本は隣にいたのです。
この後、苑子が土橋のところに行き、たぬき爺の頬を札束で叩いて啖呵を切り、花咲かじいさんよろしく道中3千万をばら撒くというカタルシスたっぷりのシーンを挟み、再び苑子のアパート。
3千万を有意義に使ってすっきりした苑子は、お礼として司と流星に銀杏をふるまうのでした。

数日後。
流星は、司にマンションを出ると告げます。
驚く司に、更に続ける流星。
「お前が俺に、友情以上のなにかを抱いているっていうのな。あれ、応えることはできない。俺が応えることは絶対にない」
きっぱりとした拒絶に、思わず席を立つ司。その背中を、流星の悲痛な声が追いかけます。
「友情だけを大切にしたいんだよ!」

夜の街をひとり、あてどなくさまよう白いコートを纏った司。
その姿は、亡霊のようです。