7月25日25時29分より、ドラマ『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』第一話が放映されました。
原作は2020年11月1日から2022年10月1日までぶんか社の無料マンガサイト「マンガよもんが」で連載されていた松本あやか著『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』全二巻。
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第1話ストーリー 元高校球児で現在、女性ファッション誌『ソフィア』の編集部に勤める石田友也(27)は、今日も現場で編集長に注意されていた。この職場は自分に向いてないのではと悩む石田。 そんな中、石田は担当者の不在により、同誌にコラムとイラストを連載している料理研究家三ツ矢歩(54)の原稿を取りにいくことに。 しかし石田は朝食抜きがたたり、猛暑の中三ツ矢邸宅の玄関前で倒れてしまう。彼を介抱し手料理を振る舞ってくれたのは、石田が玄関先でお手伝いさんと間違えた三ツ矢歩そのひとであった。
私は放送圏外在住なので、週末TVerにて視聴しました。
よかった……!
原作からの設定変更も大丈夫です。テンション高めのラブコメテイストだった原作に比べて、主人公である石田のナイーブな面に焦点をあてる描き方、なるほどと思いました。悩める青年であるのを全面に出すことでストーリーがスムーズに繋がって飲み込みやすくなるんだなと納得しました。
原作の、三ツ矢先生がオープンリーゲイだという設定をきっちり残してくれたし(ドラマ内のwikipediaにおいて「同性愛者をカミングアウトしている著名人の一人である」と書いてるのがはっきり映し出されている)。
なにより、石田が三ツ矢先生に目を奪われる瞬間をすごくきれいに大切に演出してくれて、涙が出そうでした。
2巻収録の第8話冒頭における石田の科白、このドラマならそのまま使ってくれると信じてるよ!
楽しみが増えました。
・キャスティングについて
石田友也役 酒井大成さん
爽やか! フレッシュ! 長髪でチャラチャラしているように見えてその実真面目で、あまり器用ではなく世渡りも上手くないというのが伝わる佇まい、すごくいいです。
憎めない素の愛嬌みたいなものがあるところ、まさに石田です。
スキップルンルンで三ツ矢邸宅に向かう姿がハマってるし、既にいくらか披露してくれた三ツ矢先生を巡るひとり七転八倒がこれからもとてもとても楽しみです。がんばれ石田。
三ツ矢歩役 山崎まさよしさん
三ツ矢先生のキャスティング、最初に聞いたときは本当にびっくりしました。
好きなBLの主人公の相手役が山崎まさよしになることあるんだ……
しかも主題歌書き下ろしてくれるんだ……
という、なにか具体的な感情や感想を抱くことさえできない、この圧倒的な現実、情報量。
受け止めるのにややしばらくかかりましたね。
原作の三ツ矢先生は京言葉を話す俳優顔負けのシュッとした料理研究家なわけですが(実在の某先生を連想させる)キーポイントは茶目っ気にあると思っていて。その点、山崎さん演じる三ツ矢先生の、畑仕事してるのがすごくなじむと同時に浮世離れもしているという軽やかな佇まい、ぴったりです。醸し出すおっとりゆったりした雰囲気で和むし。
あと声がいいので、石田が先生の「おまじない」を思い出してほわほわしてるの、わかるよと素直に思う。
そしてドラマの顔である、三ツ矢先生の飼い犬・ゴールデンレトリーバーのフリト。
原作ファンなので、実写化によりキャラクターが演者を得て動いていること自体に感動があるんですよ。
・漫画『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』
LINEマンガにて2023年夏頃に読み始め、最終話課金するくらいならと、えいやっとhontoで電書の単行本を買い、連載終了の11か月後、無事完結を見届けました。
しばらくしたら、なんか2024年の新刊予告に紙の本があるな……? と何度も確認して、コミコミスタジオで小冊子付きのセットを予約購入したのです(コミコミスタジオとはBL新刊購入の際、特典で描きおろし小冊子が高い確率でついてくる専門書店です)。
小冊子8ページの内容は最終話(第12話)22頁のあと、三ツ矢先生のお宅にいる二人です。
この話をしたら「むちゃくちゃ好きじゃん」とのコメントをもらったのですが、そうだったみたいです。
・ドラマ放送前の不安
ドラマ化第一報から期待と不安と想定される改変で頭がいっぱいで、「大丈夫かな…」と友人に聞き役になってもらってました。
友人曰く、料理×BLという題材でそんなに大きな問題になることはないと思うよ、というのは、確かにそうなんです。原作も三ツ矢先生と石田との年齢差以外は王道ラブコメディだし(ロマンスもので主人公の想い人に明示的に元恋人がいて、本編で活躍するのはややイレギュラーと言えるかも)。
ただ、チキラボの芸能・メディア分野におけるハラスメントや圧力問題についての実態調査の報告書を読んで、思うところがあったんですよね。
以下引用 “2000年代前半、ジェンダーや性教育にかかわるリベラルな発信をすると番組がつぶされる恐れがあると専門家から指摘され、企画を見送った(統一教会などの影響を受けた自民の超保守勢力への配慮)(50代女性・メディア関係者)” テレビ芸能業界における圧力ハラスメントの実態調査報告書 27頁29行より
バックラッシュですね。
2005年には与党議員が放送前のNHKの番組に介入する事件も起こりました。
政権は公共放送だけでなく民放テレビ局へも、番組の内容について電話で申し入れをしており、結果現場が委縮してしまっているというのはそこそこ知られた事実だと思います。
もしかしてこれらの委縮が報道・教養・ノンフィクションといった部門だけじゃなく、ドラマ制作のほうにも波及してしまっているなんてことはないのかな…?
ドラマ『セクシー田中さん』の報告書でも、テレビ局側が原作から改変しようとしたのは主人公が受けた家庭内での性差別エピソード(女の子だから短大でいいよね)や、性教育(アフターピル)にあたる描写だったのも気になってて。
私は実写BLドラマは全然追えてないのですが、「原作で名言されている登場人物のセクシャリティが実写化だとなぜか隠蔽されている」というファンの声が聞こえてきていました。国内BLドラマは他の連続ドラマと違いワンクールきっちり、つまり10話製作されることが稀だし限られた話数という制約で原作のエピソードを削るのは理解できるんですよ。でもセクシャリティって、モノローグだと台本にして一行とかでしょう。わざわざ削るのって、セクシャリティにまつわるものがリベラルな性教育とみなされてる可能性があるな…ともやもや考えてたんです。
だとしたら三ツ矢先生の「同性愛者であることを公言している」というのは、まさになんですよね。
杞憂に終わって本当によかった。
・ドラマ『三ツ矢先生の計画的な餌付け。』第一話鑑賞中の私
TVerで開いたあともなかなか再生ボタンを押す勇気が出なくて、いっそ家事をしながらの視聴なら過度に集中するのが防げるかなとディスプレイから離れたのに、結局25分間噛り付くように鑑賞しました。
めちゃくちゃひとりごとが出たし、汗はかくし、生きた心地はあんまりしなかった…
とくに、三ツ矢先生が石田にプチトマトを手ずから食べさせようとする場面、夢を介して石田が恋心を自覚し始めるドラマアレンジの甘酸っぱい場面なのですが、画面の前の私は突っ伏して「身が持たない……」と口から出てしまっていました。
終始自分の鼓動音が煩くて、ジェットコースターに乗ってる心地でした。
二話からは万全の体勢で挑みます。