月: 2020年5月

ブギウギ・キャット Spring Tour ’90 ver.

アイドル東山紀之は自分をよく馬や犬に喩えます。
動物占いが流行った頃にはペガサスって自分にぴったりと言い切り同席の植草さんを呆れさせていました。

1990年少年隊春コンサートの『ブギウギ・キャット』は錦織一清がステージでワンコーラスを歌ってからバックバンドと女性コーラスメンバー、CDデビューを間近に控えた忍者を紹介します。次に植草克秀を呼ぶと、応援団のように長い鉢巻をたなびかせたカッちゃんが走って登場。
そして「最後にとびきりイカしたやつを紹介します、メインボーカル東山紀之!」という掛け声で、後方階段上のステージに現れた少年隊の末っ子が肩に抱えた大砲をドカンとぶっ放します。
クールな佇まいのあのヒガシが、当時23歳とはいえ悪ガキ全開の笑顔です。
リーダー錦織はアイドルを完璧に演じる少年隊の総合演出家。ロック歌手としてステージ中央でギターとのセッションもセクシーに魅せて、東山との掛け合いのパートに入るとヒガシのラップに答えず「みんなありがとうー!」とアドリブのファンサービスをします。
その合図により、後ろを向いて前髪を掻き上げたりと錦織を立てていた東山は思いきり、ひとりぽーんと高台に昇りガンガンパフォーマンスを始めます。
錦織も「あっちを見てね」とでも言うように東山のステージを指差します。ラストのバク転バク宙の連続技も少年隊では東山ひとりが担当。
錦織は東山が全力でパフォーマンスするためにマイクスタンドを寄せなきゃいけないし、植草は植草で頭につけた長い鉢巻をきれいに見せながらアクロバットするのは無理があるので(そんな芸当、東山だってそうそうできないと思いますし)。

猫をかぶるという言い回しがありますが、東山は少年隊メンバーでいるときは犬から猫へ変身するのです。
その証拠に手元にある1991年2月10日にプレスされたCD版ミニアルバム「WONDERLAND」に収録されている『ブギヴギ・キャット』の最後でシャム猫みたいに にゃお と可愛らしく鳴いてる声はどう聞いても対外的にはMr.パーフェクトとして王子様的アイドルを忠実に演じている東山紀之そのひとのものなのですから。

’90SPRING TOUR/少年隊

『イップ・マン 継承』における葉問と李小龍について

『葉問 継承』冒頭において、
誰よりも速いことを鼻にかけ葉問に武術を教えろと勇んでいた李小龍が、葉問が扉を開けたら怖気付いて帰って行ったという一連のシークエンス、

あれって葉問は音よりも速く動く仙人であることを端的に表現した演出なんですよね。
1960年代初頭イギリス領香港はラジオが普及し若者も音楽に合わせて踊っています。なので小龍の速さの基準は音です。
が、葉問は元々広東省珠江の佛山で好きな武術やってる片手間に生活してた道士なので、世俗に疎いんです。
山から降りる過程で親友・清泉に支えられ妻・永成に叱咤激励されながら俗世の作法を学び、本作では普段は好好爺を演じることに(外見年齢を除いては)かなり成功しています。けれど相手が言葉も身勢语(body language)も聴こうとしない無礼者だと、本来の道士に戻るんです。

確かにこの動作設計は洪金寶からバトンを渡された、そして武打星甄子丹を見出した師匠である袁和平にしかできないものですよね。

2020年5月3日午後7時からのTOKYO MXでの放映に合わせて好きに実況解説したスレッドはこちらです→ https://twitter.com/Azuma_Matsu/status/1256889332163461120