story
国文学科のソ・インウ(イ・ビョンホン)は雨の日に出逢った白いシャツの女性が忘れられない。仲間には「一目惚れなんて」と笑われるが、出会ったバス停に彼女が現れるのを待ち続ける。 そんなある日、大学構内で白いシャツの女性を見つける。彼女、イン・ヒス(イ・ウンジュ)は同じ大学の彫刻科の学生だったのだ。インウのひたむきなアプローチにより二人は愛し合うようになる。しかしインウが兵役へ出発する日、ヒスは見送りに現れなかった。 そして17年の時が流れ、インウは国語の高校教師になっていた──。
噂はかねがね聞いていたんです。聞いていたんですが、実物は想像のはるか上でした。設定と演出、出演陣の熱演があいまって大怪作になってます。本気で感動しました。 テーマは「性別なんて関係ない、お前だから好きなんだ」というJUNEの王道です。大好き。 前半はインウが凄まじくイケてない文学青年で楽しい。 服装も髪型も行動も喋り方も走り方もすべてがダサい。清潔感のあるダサさ。 それはそのまま彼の性格にも繋がっていて、この男、仲間うちでは見栄でちょっと斜に構えて見せても、実に不器用で純情。 こと恋愛に関しては、不慣れなために殆ど挙動不審(例:ヒスを見るために彫刻科の講義に出席し続け、必須単位を落とした)。 けれどその一途さが結果的に一目惚れの相手であるヒスの心を動かすことになるんだからいいのか。 それにしてもインウ、孟アタックをし掛けているはずがヒスと一対一になると常に受け身です。
時の流れを、ヒスのために吸い始めた煙草の扱いで表現する演出がいいですね。 しかも同時に、ヒスと付き合うことでファッションその他が洗練されていったってことも表している。 兵役に行く直前のインウはセンスが良くなってる。相変わらずキスは受け身ですが。
後半はインウが自分を見失っていくにつれて画面のこちら側も迷子になっていきました。先生マジでしっかりしてください。それじゃストーカーです。 三分に一回深呼吸しながら観たので、ある意味『悪魔を見た』より疲れた……。
インウが「チュヨン(娘)は俺が産んだ子だな」と言い始めたところが個人的ハイライトでした。
SFでもファンタジーでもないのに妙に説得力があるのは、とんでもない設定&展開の合間合間に地に足ついた描写が挟まれているから。 観客に気になるポイントを用意しているのもそう。 例えば、インウが受け持ち生徒ヒョンビンの携帯電話にきたメールを削除しちゃった上に、その送り主に全力で嫌がらせをする流れ。 インウもまだ自分が何をしているか分かってないから、一切説明なしで進行している。「一体何があるんだ?」と観客は前のめりになります。 その後もインウはヒョンビンに関しては、本当に人としてどうかと思うことをしでかしていくんですが、芯の部分はブレてないのがいいですね。だから応援したくなる。 盗みの疑いをかけられた生徒への対応とか、その後の生徒の行動とか。本来は生意気な高校生が一目置くくらい優秀な教師である、という部分が最後まで描かれている。人柄は真面目で、誠実で、嘘はつけない。
そんな昔のままのインウ先生にも、ちゃんと昔と違うところがあるんだよというエクスキューズが印象的です。 特に揺らぐ自分の男性性を妻で確認しようとするズルさは学生時代にはなかったもので、ああ17年の歳月はこの人にも等しく降ったんだなと。
・個人的ツボ
二人三脚でヒョンビンの肩に手を置くのをためらうインウ。インウには緊張するとしゃっくりが出るくせがあるんですが、ヒョンビンの前では必死に隠そうとしてるのがまたね。 ヒョンビンに「どうせなら恋愛でもしますか? 先生」とふざけたように言われて、インウがヒョンビンの胸ぐらを掴んだもののポロポロ泣き出してしまう場面。背の高い教え子の肩に顔を埋めて泣いちゃう先生の図にきゅんとしました。
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